合唱の練習のはじめに体操を行う団体は多いと思います。

しかしながら、「なんとなく毎回やっているけど、何のため?」
「本当に必要?」と疑問に思う人は多いかもしれません。

あるいは「どんな体操をすればいいの?」と感じたことがある人もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、

  • 合唱練習における体操の目的と効果
  • よく行われる具体的な体操メニュー
  • 体操をするときに意識したいポイント

を、分かりやすく整理して紹介したいと思います。

体操の目的=体のウォーミングアップ

なぜ体操が必要なのか

体操の目的、それは体のウォーミングアップをすることです。

良い発声のためには、口や喉だけではなく、全身をくまなく使うことが必要になります。

姿勢を保つ筋肉、呼吸を支える体幹、声を響かせるための身体の柔軟さ――これらはすべて、歌う行為と密接につながっています。

全身を十分に使うためにも、声を出す前に体を十分に温めておくことが大切なのです。

体操による主な効果

全身をほぐして温め、体を大きく使えるようにすることで、次のような効果があります。

  • 全身を使った息の流し方がつかめる
  • 無駄な力みが抜け、「脱力」の感覚がつかめる
  • 声に直接かかわる喉・顔まわりの筋肉が柔らかくなる

これらはどれも、発声の安定感と響きに直結する要素です。

練習時間が限られていると、体操はつい省略してしまいがちですが、その効果は決して小さくありません。

短時間であっても、できる範囲で体操をこなしておくことをおすすめします。

筋力トレーニングとしての側面

体操は基本的には、これまで紹介してきたように、ウォーミングアップとしての役割が中心となる練習セクションです。

ただし、メニューによっては、筋力トレーニングとしての側面を持つものもあります。

分かりやすい例として、上体起こし(いわゆる腹筋運動)を挙げてみます。

この動きは、呼吸の支えとなる体幹、特に腹直筋を鍛えることが主な目的ですが、同時に全身の血行を促進する効果もあります。

そのため、筋力トレーニングでありながら、先ほど述べたようなウォーミングアップとしての役割も十分に果たします。

ただし、このように比較的大きな動きを伴うメニューは、普段の練習場所(音楽室や会議室など)ではスペース的に難しい場合もありますから、合宿や広い会場を使える機会に積極的に取り入れてみるのが良いと思います。

合唱でよく行われる体操メニュー

体操の内容は、特別なものである必要はありません。

基本は「全身をまんべんなく動かす」ことです。

一例を紹介しておきたいと思います。

よく使われる動きの例

膝の屈伸

膝を揃えて曲げ伸ばしします。

下半身の大きな筋肉を動かすことで、血行を促進し、体を温める効果が期待できます。

つま先立ち・背伸び

つま先立ちをしてグッと背伸びし、脱力してもとの姿勢に戻ります。

全身の脱力感覚を得られること、自然と良い姿勢がになるなどの効果があります。

両手を大きく広げる/ボールを抱え込む

まずは両手を大きく広け、胸郭(胸の前側)を伸ばすようにストレッチします。ことのき、肩甲骨の間をできるだけ狭めます。

次に、先ほどとは反対に、肩甲骨と肩甲骨の間を広げるようにして背中側を伸ばします。このとき、胸の前で大きなボールを両手で抱え、そのボールが膨らんでいくようなイメージを持つと良く伸びます。

肩回し

指先を肩に軽く当て、肩を回します。

このとき、肘の先でできるだけ大きな円を描くようにすると、肩まわりの筋肉を大きく伸ばすことができます。

体側伸ばし

右手を天井に向かって上げ、体を左側に倒して右の体側(脇腹のあたり)を伸ばします。

それができたら、今度は反対に左手を上げ、右に倒して左の体側を伸ばします。

手首・足首をブラブラ

体の力を抜いて、手首・足首をブラブラさせます。

手首・足首だけでなく、体全体が脱力できるメニューです。

首を前後左右に倒す・回す

首を前後左右に倒し、その反対側をストレッチします。

このとき、手で軽く押す、引っ張るなどしてサポートするとよりよく伸びます。ただし、大きな力を加えないように、気持ち良い程度の範囲にしましょう。

左右にぐるりと回すのも効果的です。このとき、伸びている場所をしっかりと感じながら、ゆっくりと回すのがポイントです。

顔の筋肉を動かす

以下のような順番で、顔の筋肉を動かします。

  1. 顔のパーツを全部真ん中に寄せる
  2. 全部右に寄せる
  3. 全部左に寄せる
  4. 全部上に寄せる
  5. 全部下に寄せる
  6. 再び全部真ん中に寄せる
  7. 最後に思いきり笑顔を作る

表情が明るくなる、言葉が良く伝わるようになるなどの効果が見込め、リラックス効果も高いので、本番直前などにもおすすめです。

舌を回す

舌を歯と歯茎の間に入れ、右回り・左回りに20秒ずつくらいてぐるぐると回します。

舌は発声で非常に大きな役割を果たします。ここでしっかりと動かしておきましょう。

進め方のコツ

体操では、下半身 → 上半身 → 顔、というように下から順に行うと、全身をくまなく動かすことができます。

体を温めるという意味でも、大きな筋肉の多い下半身から行うのは理にかなっていると思います。

また、メニューを考えるのが難しければ、ラジオ体操でも十分効果があります。YouTubeなどの体操・フィットネス動画を活用することもできるでしょう。

時間やスペースに余裕がある場合は、軽い筋トレやヨガの要素を取り入れる場合もあります。普段行わない動きをすることで、体に新しい刺激を与えることができます。

体操中に意識したいポイント

息を止めない

体操中は、常に息を流し続けることを意識しましょう。

動きに集中していると、意外と呼吸が止まってしまいがちです。ときどき「今、ちゃんと呼吸できているかな?」と自分に問いかけてみてください。

そうすることで、体全体を使って呼吸をしている感覚が、少しずつ掴めてきます。

伸ばしている場所を意識する

ただ形だけをなぞるように動くのではなく、「今、どこが伸びているか」「どこがほぐれているか」を意識的に感じながら行うと、体操の効果はさらに高まります。

漫然と行わず、一つ一つの動きに意味を感じながら進めましょう。

力を入れた後は脱力する

体操の動きの中では、一時的にぐっと力を入れる場面があります。

そのあとは、ふっと力を抜いて脱力することを忘れないようにしましょう。

脱力した状態とは、無理がなく、自然によく響く発声の基本となる状態です。

その感覚を、体操の中でつかんでいくことが大切です。

一度しっかり力を入れ、そこから力を抜く――この流れを作ることで、脱力の感覚はよりつかみやすくなります。

まとめ|体操は「歌うための準備時間」

合唱における体操は、体を温め、呼吸を整え、無理のない発声につなげるための、大切な準備時間です。

良い声を出すためには、口や喉だけでなく、姿勢・呼吸・体の使い方といった全身の状態が大きく関わってきます。

体操を通して体を目覚めさせておくことで、発声練習や曲練習にもスムーズに入ることができます。

練習時間が限られていると、体操はつい省略されがちですが、短時間でも効果は十分にあります。

  • 体を温めること
  • 呼吸を止めずに動くこと
  • 脱力した状態を感じ取ること

などを意識して取り組みましょう。

毎回の練習のはじめに行う体操を、「なんとなくやる時間」ではなく、良い合唱につながるための準備の時間として、ぜひ大切にしてみてください。