【声の源】合唱のためのブレストレーニング|4つのねらいと基本メニュー

合唱の練習では、必ずと言っていいほど「ブレス」の練習を行います。
けれど、「そもそもブレスって何のためにやっているの?」「どういうことに気をつければいいの?」と思いながら練習に取り組んでいる人も、中にはいるかもしれません。
ブレス練習は、地味で大変なわりに、効果がすぐには分かりにくい練習でもあります。
しかし、このブレスを丁寧に積み重ねていくことが、歌の上達にとって欠かせない土台になります。
もくじ
ブレスとは? その重要性
ブレスとは、つまり呼吸のこと。歌を歌う上で呼吸は非常に重要な役割を担っています。
それは、「息」こそが歌声の源だからです。ブレスの上達なくして、歌の上達はありません。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、まずはこの事実をしっかり認識しておくことが大切です。
どの合唱団でも、必ずブレス練習が行われるのは、それだけブレスが歌にとって重要であることを物語っています。
一方で、ブレス練習は地味な上にしんどく、「本当に上手くなっているのか分かりにくい」練習でもあります。
それでも、ここを丁寧に積み重ねることが、確実な上達への近道になります。
ブレストレーニングのねらい・目的
ブレス練習のねらいを、ここでは次の4点に整理して考えてみたいと思います。
- 脱力の感覚を掴む
- 体をしっかり使う・鍛える
- 息のコントロール力をつける
- 息から声へつなげる
以下、それぞれについて順に見ていきましょう。
1. 脱力の感覚を掴む
ここでいう「脱力」とは、体の余分な部分に力が入っていない状態を指します。
声を出すために必要な部分だけが適切に働き、それ以外の力が抜けている状態――これが、自然でよく響く声を出すための理想的なコンディションです。
初心者のうちは、喉をはじめ、肩や胸などに無意識のうちに力が入りやすく、いわゆる「力み」の状態になっていることが少なくありません。
力みがあると体の可動域が狭まり、使えるブレス量が減ってしまいます。それだけでなく、声が響きにくくなったり、音程が不安定になったりと、さまざまな問題が生じます。さらに、この状態で無理に歌い続けると、喉を痛める原因にもなります。
そこで、脱力の感覚を掴むために、まずは次の点を意識しながらブレス練習に取り組んでみましょう。
- 猫背や反り腰にならないよう、良い姿勢を保つ
- お腹の動きを意識して、吸う・吐くを行う
- それ以外の部分はできるだけリラックスし、固めない
このように意識して呼吸を行うことで、「力が抜けた状態」が少しずつ体感できるようになってきます。
脱力した状態を知り、そのまま自然に息を吸ったり吐いたりできるようになること。これが、ブレス練習における最初の大きな目的です。
2. 体をしっかり使う・鍛える
「脱力」と聞くと、全身の力が完全に抜けている状態を想像しがちですが、実際にはそうではありません。
適切な姿勢を保ち、安定した呼吸を行うためには、必要な部分に適切な力(=支え)が存在します。
この支えの中心となるのが、お腹の働きです。先ほど述べたように、お腹を意識したブレス練習を継続することで、「歌うために体を使う」という感覚が徐々に身についてきます。
人によっては、そもそも歌唱に必要な筋肉が十分に使われていない場合もあります。ブレス練習は、そうした「歌うための体」を育てるトレーニングとしても有効です。
無理のない範囲で、日々継続して取り組むことを大切にしましょう。
3. 息のコントロール力をつける
普段の呼吸は、ほとんど無意識のうちに行われています。しかし、歌う際には、呼吸を自分の意識下に置き、積極的にコントロールする必要があります。
フレーズを歌い分けるためには、息に関するさまざまな要素を自在に扱えることが欠かせません。具体的には、次のような要素があります。
- 長さ(長い/短い)
- 強さ(強い/弱い)
- スピード(速い/遅い)
- 幅(広い/狭い)
- 表情(嬉しい/怒り/悲しい など)
これらを意図的に使い分けられるようになることも、ブレス練習の重要な目的の一つです。
4. 息から声へのつながりを会得する
息は声の源ですが、当然ながら、息だけでは音楽にはなりません。最終的には、息を自然に声へとつなげていく必要があります。
ブレス練習には、この「息 → 声」への移行をスムーズにする役割も含まれています。
そのため、ブレス練習と、その後に行う発声練習は、はっきりと切り離されるものではありません。両者は互いに影響し合いながら、歌うための基礎を形づくっていくものなのです。
ブレス練習で気をつけたいこと
ブレス練習を行う際、共通して意識したいポイントを紹介します。
姿勢
ブレス練習および歌う際の姿勢は非常に重要です。
指導する人によって表現は異なると思いますが、おおむね以下のことに気をつけると良いでしょう。
- 一番背が高くなるように、自然に立つ
- 軽く胸を開く
- 顎が出ないように軽く引く
- 足は無理に大きく開く必要はない
- 体が傾かないように注意する
息を吸うとき
ブレス練習で息を吸うときは、次のようなイメージで行いましょう。
- お腹の深いところに息が入る感覚を大切にする
- 「吸いに行く」のではなく、一度吐き切って脱力することで、自然に、瞬時に息が入るようにする
- いい匂いを吸い込むようなイメージで
息を吐くとき
同様に、吐くときは以下のようなことに気をつけましょう。
- 息は途中で止めず、しっかり吐き切る
- 吐き切ったあとは再び脱力し、自然に息が入るように
- 吐きながら強くなったり弱くなったりせず、一定の息で
- 息の流れがアーチを描いて遠くへ届くようなイメージで
ブレストレーニングの具体的メニュー
ここでは、先ほど紹介した3つのねらいに対応したメニューを紹介します。
1. 脱力の感覚を掴むための練習
リップロール
唇を「プルプル…」と震わせるようにしながら、息を吐く練習です。
余分な力が入っているとうまくできないため、特に唇や顔周辺の脱力を促すのに効果的です。
また、一定の勢いを保って息を吐く練習にもなります。
タングトリル
リップロールは、唇の厚さや形の関係で、どうしてもうまくできない人もいます。そのような場合には、こちらのタングトリルがおすすめです。
いわゆる「巻き舌」で、rrr…と音を出しながら息を吐きます。
舌の余分な力を抜くことができ、舌の脱力に効果的な練習です。
2. 体をしっかり使い、鍛えるための練習
短ブレス
4分音符の長さで、「スー、スー(s子音)」と区切りながら息を吐きます。
息継ぎは、音符と音符の間に行います。その分、4分音符の実際の長さは短くなりますが、できるだけ音符の長さを保てるよう、素早く・瞬間的に吸うことを意識しましょう。
4分音符で慣れてきたら、8分音符、16分音符…と、徐々に音符を細かくしていきます。
このとき、
- お腹をしっかり使って吐くこと
- 毎回のブレスで、しっかりと深く吸うこと
この2点を特に意識して取り組みましょう。
16分音符ではかなりしんどいトレーニングになりますが、体力づくりにもうってつけです。
3. 息をコントロール力をつけるための練習
長ブレス
4拍かけて「スー(s子音)」と息を吐き、2拍で吸う、というサイクルを繰り返します。
この練習では、
- 4拍の間に息をしっかり使い切ること
- 常に息の量が均等になるよう、一定のペースを保つこと
を意識してください。これにより、ブレスコントロールの感覚が養われていきます。
4拍で慣れてきたら、8拍吐いて2拍吸う、16拍吐いて2拍吸う、というように、徐々に拍数を伸ばしていきましょう。
拍数が長くなっても、注意点は同じです。
4. 息から声へのつなげるための練習
h子音で吐く
先ほどの長ブレスではs子音を用いましたが、h子音(「ハ〜」)でも行ってみましょう。
h子音を使うことで、発声時に重要となる軟口蓋を上げる感覚を掴みやすくなります。
息の流れを保ったまま、声に近い状態へ移行するための準備として有効です。
z子音で吐く
s子音に対し、z子音は有声音(声帯が振動する音)です。いわば、「息と声の中間」にあたるトレーニングになります。
息の流れを止めずに、少しずつ声帯の働きを加えていくというイメージを掴むことができる練習です。
まとめ
ブレストレーニングは、発声練習や曲練習の前提となる、とても大切な練習です。
地味に感じる練習ではありますが、ブレスは「声の源」そのものです。
日々の練習の中で、ぜひ丁寧に取り組んでみてください。




